第5回 いつも自然体"クミコ"からの応援レター「ココロの窓を開けたなら」

新連載いつも自然体

第5回 「美しい日」 (2010.9.1)

それにしても何と暑い夏だったことでしょう。いえいえ、過去形にはできないこの毎日の暑さ。
皆さまいかがお過ごしでしょうか。

昔はこんなじゃなかった、とはよく聞く話ですが、それでも日本は四季の国。
いやがおうでも、一年は四つに区切られます。してみると、三ヶ月単位で気候が移り変わっていくということ。
これはこれで、せわしなく、思わずため息の出るような目まぐるしさです。よくやってるなあ私たち、という感じです。

先月、ロサンゼルスに行きました。アメリカ西海岸、当然暑さを覚悟していたのですが、陽射しの強さ明るさに比べ、
その涼しいこと。特に私の滞在していたあたりは、ヨットハーバーも近く、朝夕は寒いといったほうがぴったり。
ホテルのショップで一番厚手のパーカーを買い、それでも震えていました。

そこで、再会がありました。もう二十年近くも前に一緒に唄っていた男性です。
英語の得意だった彼は、恋人と共に渡米し、今では現地で歌を教え、すっかり根を下ろしています。
若い頃に比べ二回りも大きく、でもシャイな笑顔はそのままの彼が運転する車で、
光溢れる街を走ります。いろんな話をします。

湿気も無く抜けるような青空。こんな日は日本だったら一年に三日あるかどうかの「美しい日」。
ああ、うらやましいと感嘆する私に彼はいいます。
「毎日こんなですよ。こんな日ばっかり。だからみいんなバカになっちゃうんです。なあんにも考えてなんかいませんよ、ほんとに」バカになっちゃうかどうかはわかりませんが、こんな「美しい日」ばかりだったら、そりゃ確かに面倒なことは考えたくなくなるなあ、と思いました。

寒さとか暑さとか、人間のチカラではどうにもならない自然の中で、人は抗い、耐え、考え、生きていくのかもしれません。そういえば、音楽でもアメリカ西海岸のものはカラッとしていて、わざわざそのカラッとした音を録りに多くのミュージシャンが日本からも行きました。
シャンソンなんて音楽が似合うとは思えませんし、哲学書も好まれそうにありません。
ま、それはそれでいいのです。

だって、人間の営みは、どこでも同じなんですから。
「これでいい」という頂上がないのが人間の営みなんですから。
この世に生まれて死ぬ、その間に様々なものとの出会いと別れを繰りかえす。
喜び、悲しみ、驚き、怒り、妬み、嘆き、ひたすら生きていく。
こんな長い人生の中で「美しい日」が一体何日あるのか。
まあ、ちょっとあったなって いえたら、もうメッケモンです。

一緒に渡米した恋人との別れを口にする時の、翳った彼の横顔を見て、そんなことを思いました。

クミコさんPROFILE

1954年9月26日 茨城県水戸市生まれ。早稲田大学卒後、’78年、「世界歌謡祭」に日本代表の一人として参加。’82年 シャンソンの老舗・銀座「銀巴里」のオーディションに合格し、プロとしての活動をスタートする。’99年 作詞家・松本隆氏に見いだされる。‘02年 アルバム「愛の讃歌」に収録した「わが麗しき恋物語」が、“聴くものすべてが涙する歌”として大きな反響を呼び、シャンソンでは異例の大ヒットとなり一躍脚光を浴びる。’07年 デビュー25周年を迎え、中島みゆき書き下ろしの新曲「十年」を収録したアルバムをリリース。翌年、アルバム「友よ!」を発表し、話題に。‘09年、三木たかし氏の遺作である「届かなかったラヴレター」をリリース。そして、今年2月9、10日には、井上芳雄さん徳光和夫さん上柳昌彦さんと共に、シリーズ35万部突破の実話集「届かなかったラヴレター」を朗読と名曲で綴るハートフルコンサートを実施。また、「届かなかったラヴレター」を含む新作ミニアルバムをリリース。2月24日にはNEWシングル「INORI 〜祈り〜」をリリースし、USEN総合リクエストチャート1位になるなど快進中。

*その他クミコさんの詳しい情報は 「クミコ オフィシャルサイト」まで http://www.puerta-ds.com/kumiko/index.html

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