第3回 いつも自然体"クミコ"からの応援レター「ココロの窓を開けたなら」

新連載いつも自然体

第3回 海、行きたい (2010.8.1)

たくさんの傷跡を残して梅雨が去り、今は夏の真っただ中。
子供たちが夏休みに入って、いよいよ夏も「全開」といったところです。

今でこそ、日焼け止めクリームを塗りたくり、日傘に帽子に手袋と、「太陽」からいかに逃げるかばかり考えている私ですが、その昔(といってもたかだか20年前)には、休みがあればすぐに海に飛んで行きました。
グアムやサイパンは近いし、でも外国だし、もちろん海はきれいでと、いいことづくめ。
何回通ったことでしょう。
日焼けなど、なんの怖れることなどあるものか。黒く焼けた肌は引き締まって美しい。
足なんか、数段痩せてみえるではないか。お腹だって腕だってしかり。と、まあ無鉄砲な日焼けオンナの誕生です。

ところがある時、何事にも的確で冷静なピアニストの男性がひとこと。
「そろそろトシ考えたら?」
無残に皮のむけた私の肩あたりを眺め、言ったのです。
無残な皮の下からは黒光りする次の皮膚が待機しています。そしてようく見ると点々とシミのようなアザのような模様が。
そうでした、確かに無鉄砲な日焼けの許されるトシは過ぎようとしていました。

そうして私の日焼け人生は終わり、したがって海に行くこともなくなりました。
でも時々テレビなどで、バシャバシャ海辺ではしゃぐ子供の姿を見ては、首にタオルを巻いてパラソルから出られない、付き添いのオバアチャンのような心持ちになり、うっすらと寂しさを感じたり。
「なんでママたちは海に来て海に入らないの?」
その手を引っ張っても頑として拒否した母親を思い出したり。

とはいえ、海は空と同様、いえそれ以上に人間にとって魅力的です。生命誕生の場所だからかもしれません。
海の上、それこそ海に抱かれるようにフワフワと浮かび、あるいは海の中、いろいろな魚とおんなじようにユルユルと流れ漂う、遥か彼方の記憶が突然、蘇ります。
「あ、海行きたい!」
コンクリートで固められた都会の街角、息苦しいビルの谷間に「海」は突然開けます。
乾いた魚みたいに、口がパクパクします。
「あ、海行きたい!」

なのに私は今日もせっせと日焼け止め、塗るのです。

クミコさんPROFILE

1954年9月26日 茨城県水戸市生まれ。早稲田大学卒後、’78年、「世界歌謡祭」に日本代表の一人として参加。’82年 シャンソンの老舗・銀座「銀巴里」のオーディションに合格し、プロとしての活動をスタートする。’99年 作詞家・松本隆氏に見いだされる。‘02年 アルバム「愛の讃歌」に収録した「わが麗しき恋物語」が、“聴くものすべてが涙する歌”として大きな反響を呼び、シャンソンでは異例の大ヒットとなり一躍脚光を浴びる。’07年 デビュー25周年を迎え、中島みゆき書き下ろしの新曲「十年」を収録したアルバムをリリース。翌年、アルバム「友よ!」を発表し、話題に。‘09年、三木たかし氏の遺作である「届かなかったラヴレター」をリリース。そして、今年2月9、10日には、井上芳雄さん徳光和夫さん上柳昌彦さんと共に、シリーズ35万部突破の実話集「届かなかったラヴレター」を朗読と名曲で綴るハートフルコンサートを実施。また、「届かなかったラヴレター」を含む新作ミニアルバムをリリース。2月24日にはNEWシングル「INORI 〜祈り〜」をリリースし、USEN総合リクエストチャート1位になるなど快進中。

*その他クミコさんの詳しい情報は 「クミコ オフィシャルサイト」まで http://www.puerta-ds.com/kumiko/index.html

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