第23回 いつも自然体"クミコ"からの応援レター「ココロの窓を開けたなら」

新連載いつも自然体

第23回 「ピアノも人も再生する」(2011.7.1)

今ではどうかわかりませんが、私の子供の頃「ピアノを習う 」というのは憧れでした。
ピアノは、親にとって「清水の舞台から飛び降りる」ような値段だったことも大きいのでしょう。
ですから、家に来てからのピアノに対しては、みんな神経を遣いました。
ぴかぴかに磨き、ちょっとでも傷ができると大騒ぎ。

で すから石巻で、津波に流されたピアノを再生させるおじいさんがいる、と聞いた時は驚きました。
本当だろうかと半信半疑のまま、伺いました。

窓ガラスが割れ、破壊され尽くした店の奥に案内されます。
そしてそこに、ピアノはあったのです。
それも何十台も。

おじいさんが現れました。
この楽器やさんの社長さんです。
81歳になられるという社長さんは、その時のことを話してくれます。
「店から全部のピアノが流れて、道路の上でピアノの上にピアノが重なり、そのまた上に車が」
「それらをクレーンで店の中に運び込んだんです」

凄まじい状態のピアノたちです。
泥に埋まって少しも動かない鍵盤、塩水でさびついた弦。
難破船から取り出されたもののよう。

三日間、呆然として、そして社長さんは決めたそうです。
このピアノを再生するんだ。
泥になんか負けてたまるか。

おじいさんなどといっては申し訳ない、全身からエネルギーが出ている社長さんです。
「再生されたピアノで唄わせてください」
私は、思わずそう申し出ていました。
社長さんの目が輝きました。

こうして約束ができました。
石巻で再生されたピアノで唄う。

再生、なんていい言葉でしょう。
「その日」が楽しみでなりません。

クミコさんPROFILE

1954年9月26日 茨城県水戸市生まれ。早稲田大学卒後、’78年、「世界歌謡祭」に日本代表の一人として参加。’82年 シャンソンの老舗・銀座「銀巴里」のオーディションに合格し、プロとしての活動をスタートする。’99年 作詞家・松本隆氏に見いだされる。‘02年 アルバム「愛の讃歌」に収録した「わが麗しき恋物語」が、“聴くものすべてが涙する歌”として大きな反響を呼び、シャンソンでは異例の大ヒットとなり一躍脚光を浴びる。’07年 デビュー25周年を迎え、中島みゆき書き下ろしの新曲「十年」を収録したアルバムをリリース。翌年、アルバム「友よ!」を発表し、話題に。‘09年、三木たかし氏の遺作である「届かなかったラヴレター」をリリース。そして、今年2月9、10日には、井上芳雄さん徳光和夫さん上柳昌彦さんと共に、シリーズ35万部突破の実話集「届かなかったラヴレター」を朗読と名曲で綴るハートフルコンサートを実施。また、「届かなかったラヴレター」を含む新作ミニアルバムをリリース。2月24日にはNEWシングル「INORI 〜祈り〜」をリリースし、USEN総合リクエストチャート1位になるなど快進中。

*その他クミコさんの詳しい情報は 「クミコ オフィシャルサイト」まで http://www.puerta-ds.com/kumiko/index.html

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